温泉場スケッチ
私にとって旅の楽しみは温泉の楽しみでもあります。北から順に掲載してありますが、スケッチとして残っていない「私の名湯」に、吾妻高湯、白布高湯、湯田川温泉、熊野のつぼ湯などがあります。ぜひ再訪したいものです。
                                             <夏油温泉 (岩手)>  2号
この温泉は、雪の季節は閉鎖している。薬効は確かで湯治客も多い。よい温泉の条件の一つは、湧き出口に近いことであるが、ここはもともと湧いているところに湯船を作っている(今は少し怪しい)。絵を描き終わったとき手前の湯に入っていた人が立ち上がった。すらりとした妙齢の女性でドキッとした。このあと別の湯に入ったら、妙齢とは云い難いご婦人からシラネアオイを教えると云われ、裸のまま手を取り合わんばかりに川沿いの道を案内される。混浴では何が起こるか分からない。
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                                     <鉛温泉 白猿の湯 (岩手)>  2号
夜の雪道を走る。心細くなってきたころに一軒宿の鉛温泉につく。湯は三箇所あってなかでも白猿の湯はかなり変わっている。入り口からはるか下に湯船があり、天井がものすごく高く、湯桶がからんからんと鳴り響く。江戸時代にタイムスリップした気分となる。一番驚いたのは、この湯は立ったまま浸かるのである。浅いところで胸くらい、中央部は人の丈ほど深い。しかも、湯は湯船の真ん中から湧き出ている。
                       <岳温泉(福島)>  2号
裏磐梯の紅葉ハイキングのとき土湯と岳温泉に入った。どちらもよいが、岳温泉の町並みは風情がある。泊まった宿が高台にあり、ガラス窓が部屋一杯にはめてあるので眺望が素晴らしい。夜景もよかったが、朝の景観がまたよかった。阿武隈川を隔てて山並みが長大に拡がり、太平洋から朝日がのぼる。景色の印象が強く温泉のほうはよく思い出せない。
               <奥日光湯元温泉 湯の湖>  2号
戦場ヶ原をほっつき歩いた後、この絵の左側から落ちる湯滝の壮観さを眺め、右奥に少し見える湯元温泉にとまる。日光一帯の温泉の源泉である湯元には、温泉寺と温泉神社があるくらいだから効き目も大きい・・・はずであるが、翌日の日光白根山は八合目で頓挫した。
 <お猿の温泉(長野 湯田中)>  2号
志賀高原でのスキーの帰途に立ち寄った。湯田中から結構距離がありハイキング気分で歩く必要がある。見物にはルールがあって、1)ビニール袋を持ち歩かない(食べ物と思われさらわれる)2)目を合わせない(襲撃と勘違いされてひっかかれる) 猿はみな湯で上気しているように見えるが、もともとの顔色なのかは定かでない。この湯は猿専用で人間は入れません。念のため。
                     <山田温泉(長野)>  2号
よく上山田温泉と間違われる。あちらは遊興地、こちらは秘境といったおもむき。文人に好まれ、一茶とのゆかりも深い。奥の五色温泉や七味温泉などを総称して信州高山温泉郷といっている。この絵の立派な大湯は300円で入れる。しかし、私の好みでいえば宿の檜風呂がよかった。松川に面し気分もよい。紅葉のころもよかったが新緑も冬季も捨てがたい。
                  <あずまや高原温泉(長野)>  2号
四阿山の麓、鳥居峠の先にあずまや高原ホテルという一軒宿がある。泉質はともかくここの露天風呂は気分がよい。夜は満天の星、昼は浅間山を眺め(ただし女湯)季節には林檎なども浮かぶ。ときにはカモシカ、狐などが現れる。絵は女湯ではなく、部屋の窓から早朝の浅間を描いたものです。
<高峰温泉(長野)>  2号
今は高峰山の稜線上、スキー場の上に位置するが、前はもっと下の谷間にあった。そのころは電気もなく本当のランプの宿だったそうである。今もその名残で風呂や玄関にランプが置いてある。聞くと小樽の北一ガラスから取り寄せたものという。絵の風景は池の平への道から描いたものだが、風呂から見える風景も殆どこれと同じ。この宿は、ロビーの前が餌場になっていて沢山の野鳥を観察できる。
<乗鞍温泉 ローリーホフ(長野)>  2号
乗鞍高原スキー場にあるスイス風の宿、ローリーホフに宿泊する。スイスと違うのは嬉しいことに温泉がついていることである。温泉成分が強く建物を傷める恐れがあるので別棟になっている。湯口には布袋のフィルターが付いていて、そこから豊富な湯が流れ出ている。この湯に浸かると一週間は温泉臭が抜けず得した気分になる
<中川温泉(神奈川)>  2号
丹沢の大野山に登ったあと、信玄の隠し湯として知られている中川温泉に向い、小奇麗な庭を持つ老舗旅館信玄館に入る。川に面したゆったりとした湯に癒される。この絵は、近くの名所箒杉を描いたもので、近寄るとさすがに巨木の名にふさわしいく圧倒的な迫力がある。
 <大沢温泉(静岡)>  2号
伊豆を歩き回るため大沢温泉ホテルに滞在する。この宿は「私の名湯」のトップランクに入る。建物は400年を誇り、源泉2本を有し、屋上の露天風呂の開放感は他に例を見ない。来客があると歓迎の餅つきが玄関土間で盛大に行われ、蔵を改装したバーでは本物の蓄音機でSPレコードを聴くことが出来る。
<湯村温泉(兵庫)>  2号
昔、吉永小百合さん主演の夢千代日記というドラマ、映画があった。原作が湯村を舞台にしているのでここに小百合さんの夢千代像が立っていて、銅鋳物の手形も置いてある。皆が触れるのでピカピカに光っている。私も親しく手を重ねたことは云うまでもない。
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<黒川温泉(熊本)>  2号
温泉手形を貰って大急ぎで3箇所の湯に入る。それぞれ趣きがあって楽しめる。三箇所ともスケッチしたが風呂は難しい。一応客に許可を貰うがあまりのんびりと描く訳けにもいかない。うす暗い上、湯気でメガネが曇るので描きにくい。今回はバスできたので時間も気になり、最後は走って集合場所に帰る慌しさだった。